トモンチョ小説
2010年02月26日
2009年09月30日
2009年05月12日
タイタニック号を救え!!
「過去にさかのぼるタイムマシンなんぞ造っても、無駄じゃよ」
「つまり、博士の考えではタイムパラドックスなんて存在しないと?」
「仮に過去にもどって何かをしたとしても、それは歴史にとって必要なピースのひとつに組み込まれているはずじゃ。未来を変える事など、絶対にできん」
いつもはくだらない博士の話に無理やり付き合わされる助手だったが、この日は違った。
きっかけは助手が借りてきた映画だった。
「バックトゥザ・ブッチャー」という、ひょんな事からタイムマシンに乗って、過去へ飛ばされてしまうSFアドベンチャー作品。
この手のジャンルは大抵未来を変えさせないために主人公達が過去の歴史を守ろうと奮闘するモノが多いが、鑑賞中に博士がシナリオにケチをつけてきたのだ。
「じゃあ、たとえば過去に戻って博士を殺そうとしたらどうなるんです?」
「わしが現実にこの年まで生きている以上、なんらかの理由でそれは必ず失敗する。ありえない話じゃから、絶対に実現する事はできん」
自信たっぷりに博士はそう言うが、助手はどこか腑に落ちない。
確かに博士の言う事は正論なように聞こえるのだが、何か見えない大いなる力によって行動が阻害される、という神の意志による事のように思えて、納得しきれないものがあった。
これは理屈ではなく、恐らくほとんどの人がそう思うことだろう。
もし仮にタイムマシンがあったとしたら、1万人の軍勢を送り込んで博士一人の命を狙う事も可能だ。しかし、博士の理論でいくと、それでも博士は死ぬ事はない。
「うーん…考えれば考えるほど、モヤモヤしてきますね…」
「ならば試してみるか?」
唐突な一言に硬直する助手をよそに、博士が用意したのは一人乗り用の小型タイムマシンだった。大きさは洗濯機くらいだろうか。
「以前タイムマシン開発に失敗した時から密かに研究を重ねて開発しておいた。こいつは完璧じゃよ。往復一回分の使い捨てだがね」
常人ならさらに慌てふためくところだが、残念ながら助手は博士の巻き起こす騒動の最大の被害者である。頭の切り替えは早かった。
「無駄と知りつつ造ってあるのが博士らしいですね」
「造ってから気がついたんじゃ」
余計博士らしい、と思った。
「わかりました。ぜひ試させてください。でも…」
「でも?」
「いや、せっかく試すんですから、有意義な事に使いたいものですね。たとえば、大勢の命を救う事のような…」
博士はあきれかえったように言った。
「わしから言わせれば、どうやっても歴史は変わらんのだから核ミサイルを持参しようが一緒じゃよ。いっそ地球を破壊できるだけの兵器でも持たせようかの?」
「いくら何しても歴史は変わらないといわれても、非人道的な事なんてできませんよ」
博士は超現実主義者で理論的な人間だが、助手は違った。
そういう意味では博士とは真逆なタイプではあるのだが、それゆえにうまく付き合えるといった面もあるのだろう。
「あ、そうだ」
助手が借りてきた映画の中に、タイタニック号沈没による悲劇を描いた作品があった。
絶対に沈まない、とまで言われた豪華客船タイタニック号は、処女航海で氷山に激突し沈没してしまうわけだが、博士の発明品をもってすれば氷山ごときでは絶対に壊れない装甲を作り出す事なぞ造作もない事であった。
「博士、あの【カッチカチやぞ!!】もっていっていいですか」
「ん? ああ、あの懐中電灯型の硬度調節機か。おう、かまわんぞ」
博士の発明品【カッチカチやぞ!!】とは、ビームを照射することで対象の硬度を自由に操作できるという博士ならではのムチャクチャな発明品であった。ネコ型ロボットがポケットから出しそうな道具ではあるが、ここは健康のため深く考えない方が良いだろう。
「これでタイタニック号の船体を照射すれば、氷山にぶつかった程度じゃビクともしない装甲に生まれ変わるはずだ。映画には悪いけど、ああいう歴史なら…」
タイタニック号沈没事故は歴史的な大事故で、1500人以上の犠牲者を出す大惨事となった。最新の映画ではCGを駆使し、事故の恐ろしさを再現してるが現実はもっともっと恐ろしかったはずだ。
「まあ、とにかく納得いくまでやってくるとええ。しかし、色んな可能性を考えて準備だけは怠らないようにな」
そう、もし博士の言う通り歴史がどうあがいても動かないものだとしたら、助手の行動は絶対に失敗するわけだ。
たとえば、【カッチカチやぞ!!】の突然の故障、タイムマシンの誤作動、最悪なんらかの事故などにより助手の命そのものが失われる可能性もある。
「わかっています。博士、すみませんが機器のチェックだけ手伝ってもらえますか」
「うむ、実験とは常に万全の状態でなくてはならんからな。わしも自分の説を証明したいから、協力は惜しまぬよ」
常人離れした頭脳の持ち主二人が、徹底的にメンテナンスを繰り返し、機材の状態、移送ポイントの確認などで万全の状態を用意した。
「では博士、行って来ます」
「うむ、何が起こるかわからん、目的を達したら寄り道せずすぐ戻ってくるのじゃぞ」
こうして助手は、タイタニック号建造の現場へと時間をさかのぼり、こっそり忍び込んでいったのであった。
さて、この助手の行動ははたして歴史を変える事が出来たでしょうか?
答えはNOです。
解明編はこちら。
今回、お笑いは抜きです。
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「過去にさかのぼるタイムマシンなんぞ造っても、無駄じゃよ」
「つまり、博士の考えではタイムパラドックスなんて存在しないと?」
「仮に過去にもどって何かをしたとしても、それは歴史にとって必要なピースのひとつに組み込まれているはずじゃ。未来を変える事など、絶対にできん」
いつもはくだらない博士の話に無理やり付き合わされる助手だったが、この日は違った。
きっかけは助手が借りてきた映画だった。
「バックトゥザ・ブッチャー」という、ひょんな事からタイムマシンに乗って、過去へ飛ばされてしまうSFアドベンチャー作品。
この手のジャンルは大抵未来を変えさせないために主人公達が過去の歴史を守ろうと奮闘するモノが多いが、鑑賞中に博士がシナリオにケチをつけてきたのだ。
「じゃあ、たとえば過去に戻って博士を殺そうとしたらどうなるんです?」
「わしが現実にこの年まで生きている以上、なんらかの理由でそれは必ず失敗する。ありえない話じゃから、絶対に実現する事はできん」
自信たっぷりに博士はそう言うが、助手はどこか腑に落ちない。
確かに博士の言う事は正論なように聞こえるのだが、何か見えない大いなる力によって行動が阻害される、という神の意志による事のように思えて、納得しきれないものがあった。
これは理屈ではなく、恐らくほとんどの人がそう思うことだろう。
もし仮にタイムマシンがあったとしたら、1万人の軍勢を送り込んで博士一人の命を狙う事も可能だ。しかし、博士の理論でいくと、それでも博士は死ぬ事はない。
「うーん…考えれば考えるほど、モヤモヤしてきますね…」
「ならば試してみるか?」
唐突な一言に硬直する助手をよそに、博士が用意したのは一人乗り用の小型タイムマシンだった。大きさは洗濯機くらいだろうか。
「以前タイムマシン開発に失敗した時から密かに研究を重ねて開発しておいた。こいつは完璧じゃよ。往復一回分の使い捨てだがね」
常人ならさらに慌てふためくところだが、残念ながら助手は博士の巻き起こす騒動の最大の被害者である。頭の切り替えは早かった。
「無駄と知りつつ造ってあるのが博士らしいですね」
「造ってから気がついたんじゃ」
余計博士らしい、と思った。
「わかりました。ぜひ試させてください。でも…」
「でも?」
「いや、せっかく試すんですから、有意義な事に使いたいものですね。たとえば、大勢の命を救う事のような…」
博士はあきれかえったように言った。
「わしから言わせれば、どうやっても歴史は変わらんのだから核ミサイルを持参しようが一緒じゃよ。いっそ地球を破壊できるだけの兵器でも持たせようかの?」
「いくら何しても歴史は変わらないといわれても、非人道的な事なんてできませんよ」
博士は超現実主義者で理論的な人間だが、助手は違った。
そういう意味では博士とは真逆なタイプではあるのだが、それゆえにうまく付き合えるといった面もあるのだろう。
「あ、そうだ」
助手が借りてきた映画の中に、タイタニック号沈没による悲劇を描いた作品があった。
絶対に沈まない、とまで言われた豪華客船タイタニック号は、処女航海で氷山に激突し沈没してしまうわけだが、博士の発明品をもってすれば氷山ごときでは絶対に壊れない装甲を作り出す事なぞ造作もない事であった。
「博士、あの【カッチカチやぞ!!】もっていっていいですか」
「ん? ああ、あの懐中電灯型の硬度調節機か。おう、かまわんぞ」
博士の発明品【カッチカチやぞ!!】とは、ビームを照射することで対象の硬度を自由に操作できるという博士ならではのムチャクチャな発明品であった。ネコ型ロボットがポケットから出しそうな道具ではあるが、ここは健康のため深く考えない方が良いだろう。
「これでタイタニック号の船体を照射すれば、氷山にぶつかった程度じゃビクともしない装甲に生まれ変わるはずだ。映画には悪いけど、ああいう歴史なら…」
タイタニック号沈没事故は歴史的な大事故で、1500人以上の犠牲者を出す大惨事となった。最新の映画ではCGを駆使し、事故の恐ろしさを再現してるが現実はもっともっと恐ろしかったはずだ。
「まあ、とにかく納得いくまでやってくるとええ。しかし、色んな可能性を考えて準備だけは怠らないようにな」
そう、もし博士の言う通り歴史がどうあがいても動かないものだとしたら、助手の行動は絶対に失敗するわけだ。
たとえば、【カッチカチやぞ!!】の突然の故障、タイムマシンの誤作動、最悪なんらかの事故などにより助手の命そのものが失われる可能性もある。
「わかっています。博士、すみませんが機器のチェックだけ手伝ってもらえますか」
「うむ、実験とは常に万全の状態でなくてはならんからな。わしも自分の説を証明したいから、協力は惜しまぬよ」
常人離れした頭脳の持ち主二人が、徹底的にメンテナンスを繰り返し、機材の状態、移送ポイントの確認などで万全の状態を用意した。
「では博士、行って来ます」
「うむ、何が起こるかわからん、目的を達したら寄り道せずすぐ戻ってくるのじゃぞ」
こうして助手は、タイタニック号建造の現場へと時間をさかのぼり、こっそり忍び込んでいったのであった。
さて、この助手の行動ははたして歴史を変える事が出来たでしょうか?
答えはNOです。
解明編はこちら。
今回、お笑いは抜きです。
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2009年03月28日
忠犬
「昨日さあ、死んだはずの犬が帰ってきたんだ」
「え? どういうこと?」
「うん、信じてくれないかもしれないけど、車にはねられて確かに死んだウチのたろすけが、夜俺の枕元にたってんの」
「じゃ、じゃあ幽霊?」
「そうかもしれないなあ。でも、夢じゃあないと思うんだ。ほら、腕に噛まれた跡がくっきり残ってるっしょ?」
「あら、ほんと! 野良犬じゃないわよね?」
「間違いなく、うちのたろすけだよ。同じ首輪してたし、模様の特徴も同じだった。何か伝えたい事でもあったのかなあ」
「きっと、愛するご主人様に会いたくて帰ってきたのよ…良い話じゃない」
「だといいんだけどなあ」
「なによ、そうに決まってるじゃない!!」
「怒ってるのかもしれない」
「そんなわけないでしょ! ペットの気持ち、まるでわかってないのね!!」
「いやあ、あいつはねたの、俺だからさ」
「昨日さあ、死んだはずの犬が帰ってきたんだ」
「え? どういうこと?」
「うん、信じてくれないかもしれないけど、車にはねられて確かに死んだウチのたろすけが、夜俺の枕元にたってんの」
「じゃ、じゃあ幽霊?」
「そうかもしれないなあ。でも、夢じゃあないと思うんだ。ほら、腕に噛まれた跡がくっきり残ってるっしょ?」
「あら、ほんと! 野良犬じゃないわよね?」
「間違いなく、うちのたろすけだよ。同じ首輪してたし、模様の特徴も同じだった。何か伝えたい事でもあったのかなあ」
「きっと、愛するご主人様に会いたくて帰ってきたのよ…良い話じゃない」
「だといいんだけどなあ」
「なによ、そうに決まってるじゃない!!」
「怒ってるのかもしれない」
「そんなわけないでしょ! ペットの気持ち、まるでわかってないのね!!」
「いやあ、あいつはねたの、俺だからさ」
2009年01月25日
睡眠薬
この新人医師にも少々不運だったかもしれない。
初めての患者が、稀に見る重度の不眠症だったのだ。
「てめえ!! いい加減にしろよ、お前の用意する薬じゃ一秒たりとも眠れやしない、なんとかしろォ!」
人間には食欲、睡眠欲、性欲という三大欲求が存在するが、これらが長期間満たされないと、ヒトは動物になる。時には、殺気すら感じさせるほどに。
「はわわっ、ご、ごめんなさいっ!」
新人女医はすっかりあわてふためき、冷静さを失っていた。
無理もない、鬼の形相をした中年男性が目の前で凄んでくるのだ。たとえどんなベテラン医師であっても、平静を保つ事は困難であっただろう。
「俺の辛さがわかるか!? 眠りたい時は眠れないのに、車の運転中には突然意識を失う事だってあるんだぞ!わかってんのか、命に関わるんだよッ!ヤブ医者!」
女医は泣きながら薬を用意し、患者に手渡した。
「わかったぞ、毎回効かない薬を出してぼったくる手だろ!? へっ、ヤブ医者の考えそうな事だぜ。そうはいかねえ、この薬が効かなかったらどうなるか覚悟しとけ!」
もう恐怖の絶頂である。携帯電話が近くにあったら、間違いなく警察へ連絡してしまっていただろう。
「そ、そんな事はありませんっ!か、必ず効くはずですから、安心してくださいっ!」
「絶対だな!?」
「はいっ!!」
「じゃあこの薬は一体どのくらい眠れるんだ!? 一分か、一時間か、一日か!?」
「大丈夫です! 飲んだら二度と、目覚める事はありません!!」
この新人医師にも少々不運だったかもしれない。
初めての患者が、稀に見る重度の不眠症だったのだ。
「てめえ!! いい加減にしろよ、お前の用意する薬じゃ一秒たりとも眠れやしない、なんとかしろォ!」
人間には食欲、睡眠欲、性欲という三大欲求が存在するが、これらが長期間満たされないと、ヒトは動物になる。時には、殺気すら感じさせるほどに。
「はわわっ、ご、ごめんなさいっ!」
新人女医はすっかりあわてふためき、冷静さを失っていた。
無理もない、鬼の形相をした中年男性が目の前で凄んでくるのだ。たとえどんなベテラン医師であっても、平静を保つ事は困難であっただろう。
「俺の辛さがわかるか!? 眠りたい時は眠れないのに、車の運転中には突然意識を失う事だってあるんだぞ!わかってんのか、命に関わるんだよッ!ヤブ医者!」
女医は泣きながら薬を用意し、患者に手渡した。
「わかったぞ、毎回効かない薬を出してぼったくる手だろ!? へっ、ヤブ医者の考えそうな事だぜ。そうはいかねえ、この薬が効かなかったらどうなるか覚悟しとけ!」
もう恐怖の絶頂である。携帯電話が近くにあったら、間違いなく警察へ連絡してしまっていただろう。
「そ、そんな事はありませんっ!か、必ず効くはずですから、安心してくださいっ!」
「絶対だな!?」
「はいっ!!」
「じゃあこの薬は一体どのくらい眠れるんだ!? 一分か、一時間か、一日か!?」
「大丈夫です! 飲んだら二度と、目覚める事はありません!!」